スポーツ外来
スポーツによる捻挫や骨折など、捻ったり転んだり、何らかの受傷に伴ういわゆるケガを“スポーツ外傷”、一方、明らかな受傷原因がなく、練習などで徐々に痛くなったりした場合は“スポーツ障害”と呼びます。当院では、日本整形外科学会、日本スポーツ協会ないし日本医師会の公認・認定スポーツドクターがこれらスポーツ外傷・障害の診療に当たっています。
1.成長期のスポーツ障害
スポーツ障害には年代別によくみられる代表的なものがあり、成長期には野球肩、野球肘、腰椎疲労骨折(腰椎分離症)、オスグッド病、セバー病(シーバー病)などがあります。これには成長期の骨および筋・腱の発育が関係しています。成長期には関節の近くの骨に骨端線と呼ばれる成長軟骨があり、骨の長軸方向の成長に関わっています(図1)。この成長軟骨が骨になって縦方向に伸びていくのですが、骨に付着している筋肉や腱といった軟部組織は、骨の成長に伴って引っ張られるようにして伸びていきます。
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図1.骨端線(膝関節正面像)
しかし、成長のスパート期(男子平均11歳、女子10歳)に骨が一気に伸びると、筋・腱の成長がそれに追いつかず、いわゆる身体が硬いといった状態(タイトネス)となり種々のスポーツ障害をきたします。また筋肉は腱となって骨につきますが、成長期にはこの腱が付着する骨表面にも軟骨があり、軟部組織の緊張(引っ張る力)に対する抵抗減弱部となって上腕骨内側上顆障害やオスグッド病などを生じます(図2)。さらに、成長軟骨や成長期の未熟な骨組織は、ボールを投げたり蹴ったりといったスポーツによる繰り返し行われる動作に弱く、野球肩(リトルリーグショルダー)、野球肘(離断性骨軟骨炎)、腰椎疲労骨折といった特有のスポーツ障害を生じます。
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図2.膝関節を真横・側面からみている図
このようなスポーツ障害は、練習を休み安静を保つことによって軽快するかもしれません。しかし、発症の原因となる軟部組織の緊張(タイトネス)をとらなければ、症状が長引いたり直ぐに再発したりする可能性があります。また、もう1つの原因として、上記の抵抗減弱部に負荷がかかりやすい無理な動きをしている場合があります。
当院では、スポーツドクターによる診断の下に動作の評価を行い、身体の1ヵ所1ヵ所を詳細にチェックし、柔軟性の再獲得や筋力強化など、各個人に合わせたリハビリを行いスポーツ復帰を目指します。
2.思春期・青年期のスポーツ外傷と障害
この時期には骨成長は完了しスポーツの活動性が上がり、スポーツ特有のケガがみられるようになります。例えば、サッカー、バスケットボールあるいはバレーボールでは膝前十字靭帯損傷や半月損傷、足関節捻挫・外側靭帯損傷があり、手術が必要になることがあります。またラグビーでは肩関節脱臼があり、若年齢での受傷は再発しやすくなります(反復性肩関節脱臼)。肉離れもこの時期に多くみられます。
一方、スポーツ障害は、野球では野球肩や野球肘(内側側副靭帯損傷)、さらに陸上競技を始めとした種々の競技で疲労骨折や膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)、アキレス腱炎がみられます。スポーツ障害では、成長期と同様に柔軟性の欠如(タイトネス)や筋力の低下、また発症の原因となる無理な動きをしていることが多いので、リハビリを行い復帰および再発を予防するようにしなければいけません。受診までの期間が長いと復帰に長期間を要することが多いので、発症後早期の受診をおすすめします。
当院ではリハビリの広いスペースを使用し、“走る” “跳ぶ” “蹴る” “投げる”といった基本的な動作をチェックし、個々の問題点にアプローチし段階的なスポーツ復帰(GRTP; Graduated Return to Sports)を図ります。この時期は、発育の過程で筋力トレーニングに適した時期になります。
3.中高齢者のスポーツ障害
中高齢者では加齢による腱の脆弱化に伴う上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)や、下肢では膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)、アキレス腱炎がみられます。さらに、関節の疾患として変形性膝関節症や半月(板)損傷があります。これらの治療はいずれも一般整形外科と同様ですが、上記成長期および思春期・青年期の項で述べたように、身体の各所にみられる問題にアプローチしなければ根本的な解決に結びつきません。
そこで当院では、一般的な外来治療に加え、各個人に適した(オーダーメイド)リハビリを徹底的に行うようにします。さらに、通常の診療で十分な改善が得られない場合には、腱・腱付着部障害に対して体外衝撃波治療、関節疾患にはPRP(多血小板血漿)治療といった保険外の自由診療を提供しています。